会期:2007年12月21(金)~23(日)
会場:パシフィコ横浜(横浜市西区みなとみらい一丁目)
委員長:川戸 佳(東京大学大学院総合文化研究科)
桑島邦博(岡崎統合バイオサイエンスセンター)
この講演会では,若い女性研究者に生物物理学の最前線を大いに語ってもらうことにしました.もちろん市民講演会ですから,分野の基礎から分かりやすくお話していただきます.これまでも,そして現在も生物物理学会では,多くの女性研究者が活躍しています.しかし,生物物理学会年会の市民講演会で,女性研究者の方にお話いただいたことはあまりありませんでした.そこで,生物物理学会の女性研究者の元気さと聡明さを一般の人たちに向けてもアピールしたいと,この講演会を企画しました.もちろん,生物物理学会会員の方にも聞いていただきたく思います.男女共同参画が大事だと言われていることに便乗しているという批判は覚悟していますが,便乗ついでに言わせていただければ,このシンポジウムに多くの女子学生,女子高校生たちが参加し,10年後,20年後の生物物理学会会員の男女比が半々になると良いなと思います.
最近の男女共同参画,機会均等の流れの中,学術分野においても女性研究者支援のためのプログラムが次々と打ち出されている.これは多くの学協会の男女共同参画に対する長年の取り組みの賜物であるが,これらのプログラムが理想とする男女共同参画の姿とはどのようなものであろうか.また,このようなプログラムの実施は現場にどのような変化を与え,それは理想に向けての変化であろうか.本シンポジウムでは最近の種々の女性支援プログラムについて,企画,立案側の意図と現場での問題点を検討し,その実情と今後の方向性について議論してみたい.
脳科学の最前線で活躍している研究者に, これまで達成された内容と, 今後解明すべき目標を語っていただく. イメージング解析と他の手法を組み合わせた研究が中心となっている. 生物物理学会で育った研究者を中心にしたところが, 本シンポジウムのこれまでにない特徴である. 脳科学は総合的な学問であるが, 生物物理の特徴を生かして切り込むには, どうすればよいかなどを, 読み取っていただきたい.
能瀬聡直 (東大・院新領域,院理)
「シナプス分子集積の生体内イメージング」
伊藤啓 (東大・分生研)
「ショウジョウバエの脳回路の機能を探る」
岡村均 (神戸大・院医)
「生物時計の光イメージング:全身に朝を伝える仕組み」
川戸佳 (東大・院総合文化)
「神経シナプスの変化と記憶:性ホルモンは神経シナプスのモジュレーター」
曽我部正博 (名大・院医)
「膜電位イメージングによるトリパータイトシナプスの解析:
神経ステロイドの記憶増進と傷害保護作用」
谷藤学 (理研・脳総合セ)
「物体イメージの脳内表現と視覚認識」
遺伝子発現や免疫応答,神経伝達などの基礎となる細胞内の情報伝達システムは,非常に多様な分子群が担っていて,一見,共通項が乏しいように思われる.しかしシステムの観点から信号処理法を考えると,実際には同じような考え方で作られている側面も多いことがわかりつつある.特に,1分子追跡の手法を用いた生物物理学的アプローチは,情報伝達システムの構築や制御方法を理解するために非常に有効であるように思われる.本シンポジウムでは,このような,細胞内情報伝達システムの理解のための新しい方法論について1分子法を中心に発表していただき,それによって見いだされた新しい発見やモデルについて議論する場としたい.
笠井倫志 (京大・再生研,JST-ICORP)
「細胞膜中で見るGPCR会合体の動的平衡」
Gaudenz Danuser (SCRIPPS研究所)
「細胞骨格分子のダイナミクスと1分子追跡方法論の開発」
Ken Ritchie (Purdue University, Dept. Physics)
「Single molecule imaging of diffusion in E. Coli membranes」
船津高志 (東大・院薬・生体分析)
「生細胞におけるmRNAの1分子イメージングと定量」
Daniel Choquet (University of Bordeaux, Cellular Physiology of Synapse)
「神経シナプスにおけるグルタミン酸受容体の集合・離散機構」
生体分子や人工分子を組み合わせてナノスケールから細胞スケールのデバイスやシステムを構築する事で,工学的な利用を可能とする技術が注目を集めている.本シンポジウムでは,生体分子や人工分子を計算素子とする事で,非ノイマン型の情報処理機構を実現する「分子コンピュータ」と,生体分子や人工分子を情報伝達媒体とする事で,電磁波によらない情報通信機構を実現する「分子通信」を取り上げ,技術の到達点と展望を紹介する.合成生物学やナノマシン等の関連研究にも触れ,新たな情報処理・情報通信パラダイムの可能性を議論する.
木賀大介 (東工大・院総合理工)
「分子コンピュータと分子通信: 生体分子を用いての構成的アプローチ」
萩谷昌己 (東大・院情報理工)
「分子コンピューティング --- これまでの10年と今後の10年」
陶山明 (東大・院総合文化)
「分子コンピュータの諸応用」
Andrew Turberfield (Dept. of Physics, Oxford Univ.)
「DNA nanotechnology」
原正彦1, 2 (1東工大・院総合理工,2理研・フロンティア研究)
「時空間機能から新しい情報処理へ」
宇理須恒雄 (分子研・生体分子情報)
「イオンチャンネルバイオセンサーの開発と応用」
檜山聡1,森谷優貴1,須田達也1, 2(1NTTドコモ・総研,2カリフォルニア大アーバイン・情報科学)
「膜小胞と分子モーターによる分子通信」
今日,多くの蛋白質の折れたたみ構造が解き明かされてきた.これらから得られる像は蛋白質の「静的な描像」である.一方,蛋白質は動的であり,多様な構造変化を伴う反応に関わる.蛋白質の詳細な「動的な描像」を明らかにすることこそ,次世代における構造生物学の重要な課題である.
本シンポジウムでは,蛋白質の「動的な描像」を研究している若手研究者による講演を行い,今後の構造生物学の展望について議論する.
浜田大三 (大阪府母子センター・免疫部門)
「オーバービュー:様々な反応に見られる蛋白質の動的性質」
北原亮 (理研・SPring8)
「可変圧力NMR法による準安定構造の検出」
菅瀬謙治 ((財)サントリー生物有機科学研究所)
「Relaxation dispersion NMRによる準安定構造の検出」
廣明秀一 (神戸大・院医・医科学専攻構造生物学分野)
「NMR H/D 交換測定法による構造転移の検出」
川上勝 (北陸先端大・マテリアルサイエンス研究科)
「AFM法による分子の力学応答と構造揺らぎの観測」
亀田倫史 (産総研・CBRC)
「シミュレーションによる構造転移の可視化」
大西哲 (理研・GSC)
「折れたたまっていないポリペプチド鎖からの構造情報の抽出:
ランダムコイル神話への挑戦」
現在、蛋白質や核酸の立体構造は急速な勢いで決定され,生命現象の解明の次の重要なステップは,立体構造から分子機能を理解することにある。特に,蛋白質や核酸が示す高い分子認識能力は,生命現象のキーである。これまでの研究から,分子認識では,溶媒分子を考慮した多数の自由度の関係した熱力学的な過程が重要であることが明らかになっている。本シンポジウムは,立体構造をベースとしながら,このような生体分子間相互作用を熱力学的に理解・制御・設計する戦略と研究の現状と問題点や,研究の基盤となるデータベースなどを主題として議論したい。
城所俊一, 宇於崎麻衣子, 山本 綾 (長岡技科大・生物)
「熱測定による生体分子間相互作用評価法の最近の進歩」
皿井明倫 (九工大・工)
「生体分子間相互作用の熱力学データベースと解析」
黒木良太 (原研開発機構・量子ビーム応用)
「X線と中性子を用いて観測した蛋白質水和水の熱力学的特徴」
齋藤稔 (弘前大院・理工)
「シミュレーションによる分子間相互作用の熱力学特性の解析と予測」
鳥越秀峰 (東京理科大・理)
「核酸が関与する分子間相互作用の熱力学的特性」
織田昌幸1, 伊藤暢聡2, 円谷健3, 藤井郁雄3
(1京府大院・農、2東京医科歯科大院・疾患生命科学、3阪府大院・理)
「触媒抗体の抗原認識と加水分解機構」
様々な生命現象を物理化学の言葉で理解するには、静的立体構造情報だけではなく,振動分光法がもたらす分子構造変化およびダイナミクスに関する情報が重要である.最近では,非線形振動分光により液液界面での分子構造の詳細な解析が行われ,生体膜界面の構造解析に道が拓けつつある.また,赤外分光法では生理的環境下での計測も可能となり,ラマン分光法では生細胞の計測も行われるようになった.本シンポジウムでは分子から細胞まで様々なレベルで展開される振動分光法の最前線について概観し,生物物理学の発展に振動分光法が何をもたらすのかについて議論する.
古谷祐詞,神取秀樹 (名工大・院工)
「赤外分光法によるタンパク質間相互作用の解析-ロドプシンをモデルとして-」
岩城雅代,Peter R. Rich (ユニバーシティカレッジロンドン・生物)
「全反射赤外分光法:生理条件下で酵素反応がラクラクはかれる(かもしれない)」
田原太平 (理研・田原分子分光)
「超短パルスを用いた新しい非線形分光で拓くソフトな界面の科学」
水谷泰久 (阪大・院理)
「時間分解共鳴ラマン分光法で観たタンパク質ダイナミクス:
ピコ秒からミリ秒まで、可視領域から紫外領域まで」
小倉尚志 (兵庫県立大・院・生命理学)
「代謝回転中のミトコンドリアの中のひとつの分子振動を観る」
加納英明,濵口宏夫 (東大・院理)
「非線形ラマン分光法による生細胞の分子振動イメージング」
ゲノム解析の結果,転写産物の少なくとも3分の1以上がタンパク質に翻訳されることなく(ncRNA),細胞のさまざまな重要な機能に関与していることが明らかになってきている.ncRNAのプロセス,ncRNA-タンパク複合体の構造機能研究は,今後の生物学にとって非常に重要である.本シンポジウムでは,古典的なncRNAであるrRNA, tRNAも含めて,RNAとタンパク質のかかわりの構造生物学的な研究例を中心に,この分野の最新の成果を紹介する.
田中勲 (北大・院先端生命)
「翻訳精度維持のためのtRNAアセチル化の分子基盤」
濡木理 (東工大・院生命理工)
「ダイナミックなnon-coding RNA成熟機構の構造的基盤」
木村誠 (九大・院農)
「前駆体tRNAプロセシング酵素・リボヌクレアーゼPの構造生物学的研究」
内海利男 (新潟大・理)
「翻訳プロセスに関わるrRNAの機能構造」
田之倉優 (東大・院農生命)
「Dicer RNase IIIドメインの結晶構造とdsRNA切断活性」
国内では, タンパク3000が終了し, ポストタンパク3000としてターゲットタンパク研究プログラムが進められている.海外では, アメリカのPSIの第二シーズンPSI2が開始されている.このような状況の中で, 構造解析を含むタンパク質解析を支援するインフォマティクスの強化が強く望まれている.また, 構造プロテオミクスの実施で得られた大量の構造データの体系化と応用も急務となっている.本シンポジウムでは, 構造プロテオミクスを支援するインフォマティクスの展開及び, 既存の構造データの活用をテーマとしたシンポジウムを開催する.
菅原秀明 (遺伝研・生命情報・DDBJセ)
「多様な参加者で構成されるタンパク・プロジェクトにおける情報の流通・共有・拡散」
Daron M. Standley 1, 2, 中村春木1, 2 (1阪大・蛋白研, 2JST-BIRD)
「PDBjの構造・機能解析ツール」
黒田裕 (農工大・院工)
「ドメイン予測」
由良敬1, 2, 3, Kim Oanh 4, 郷信広3
(1原子力機構・量子生命、2JST-CREST, 3原子力機構・バイオユニット,4奈良女子大)
「タンパク質立体構造情報と分子進化情報にもとづく
生体高分子相互作用部位の推定」
藤博幸 (九大・生医研)
「タンパク質間相互作用の予測」
郷通子1, 2, 由良敬3, 4, 塩生真史2
(1お茶の水女子大, 2長浜バイオ大・バイオサイエンス, 3原子力機構・量子生命, 4原子力機構・バイオユニット)
「選択的スプライシングがもたらすタンパク質構造への影響」
F1-ATPase分子モーターは,その超分子複合体タンパク質立体構造の解明や,一分子測定・操作などの革新的なナノバイオ実験技術の発展により,分子モーター研究のフロントランナーとなっている.本シンポジウムでは,分子モーター・ATPase 研究のケーススタディーとして,F1-ATPase 分子モーターの動作原理に焦点を当てる.一分子計測,構造生物学及びシミュレーションの若手研究者が一同に会し,この分子モーター機構の何がわかったのか,そしてなにが解決すべき課題なのかを議論する.
八木宏昌 (阪大・蛋白研)
「F1-ATPaseで起こるリガンド結合によるサブユニット構造変化のNMRによる解析」
池口満徳 (横浜市大・国際総科)
「分子動力学シミュレーションによる F1-ATPase の構造変化の研究」
政池知子 (学習院大・理・物理)
「偏光変調全反射型顕微鏡で明らかにする1分子F1-ATPaseの触媒サブユニット?のコンフォメーション変化」
古賀信康,高田彰二 (京大・院理,神戸大・理,JST CREST)
「分子シミュレーションによるF1-ATPase回転機構の研究」
野地博行 (阪大・産業科学研究所)
「結晶構造・分子シミュレーションとクロストークするF1-ATPaseの1分子計測実験」
林重彦 (京大・院理)
「ハイブリッド分子シミュレーションで探る
F1-ATPase 分子モーターの化学‐力学エネルギー変換機構」
生体機能を分子レベルから細胞レベルで可視化する手法は次々に開発されており,様々な先駆的研究が進められている.本シンポジウムでは,独創的な最先端の技術が,より高次なシステムである細胞・オルガネラのダイナミクスへ応用される可能性を探る.生物物理学のアクティヴィティを維持していくには,より複雑なシステムを新しい方法論で理解し,未踏の研究フィールドを開拓していく必要がある.講演者らの多岐にわたる技術を紹介し,生物物理学を次世代へと繋げる新しい研究の動向を見極めたい.
加藤薫 (産総研・脳神経情報)
「無染色での生きた細胞のイメージング」
根本知己 (自然科学研究機構・生理学研究所・脳機能計測センター)
「2光子顕微鏡を用いた神経・分泌細胞の機能解析」
中迫雅由 (慶應義塾大・物理)
「X線自由電子レーザーの生物物理学分野での利用」
西坂崇之 (学習院大・物理)
「光学顕微鏡により解明する蛋白質モーターの分子レベルでの作動原理」
芳坂貴弘 (北陸先端科学技術大学院大学)
「遺伝暗号の拡張によるタンパク質のピンポイント蛍光標識技術の開発」
Manuel Thery (Inst. Life Sci. Res. Technol., Commissariat a l’Energie Atomique Grenoble)
「Manipulating the geometry of cell micro-environment
to study the physical law of intra-cellular organization」
生体膜は単に内部と外部を仕切るためだけのものではなく,外部とのやりとりを行うインターフェイスとして利用されている.膜蛋白質はその役割の大きな部分を担う蛋白質群であり,生命活動を理解するための中心課題の1つとして考えられている.本シンポジウムでは膜蛋白質を介したエネルギー変換・情報変換機構の解析にスポットをあてる.この分野は高分解能の構造解析や先端的な構造変化の解析など近年詳細な蛋白質動作原理が明らかにされつつある.日本が世界をリードする分野でもあり,特に若手研究者がオーバースペキュレーションを恐れずに,メカニズムの本質を「深く」考えることで,今後を展望したい.
稲葉謙次 (九大・生体防御医学)
「細胞におけるタンパク質ジスルフィド結合形成の仕組みを考える」
村田武士 (京大・医,JST・ERATO,理研・GSC)
「V型ATPaseのイオン透過機構を考える」
杉田有治 (理研,JST・CREST)
「分子シミュレーションからカルシウムポンプの構造柔軟性を考える」
神取秀樹 (名工大・工)
「分子ポンプを考える」
須藤雄気 (名大・理)
「膜蛋白質間相互作用による光情報伝達を考える」
村上聡 (阪大・産研)
「多剤排出トランスポーターによる多基質認識と輸送機構を考える」
蛋白質の本質を理解することは,蛋白質を創り上げたゲノムの理解に,また,作用素子としての蛋白質により機能しているシステムである細胞(蛋白質の特性により規程される生理現象)の理解へと繋がることが期待される.本シンポジウムでは,ポストゲノムの諸研究により得られた膨大な多種多様の蛋白質の機能構造に関する知見を俯瞰することで蛋白質の特質を再考し,蛋白質の再発見によるゲノムから,蛋白質,細胞へと至る生物の統一的な理解の可能性を議論する.
林宣宏 (藤田保衛大・総医研)
「はじめに:蛋白質の再考による生物の新たな描像」
四方哲也 (阪大・院・情報科学,阪大・院・生命機能,ERATO/JST)
「進化実験で描くたんぱく質の適応度地形」
西村善文 (横浜市大・院・国際総合科学)
「転写関連因子の動的構造と天然変成状態」
木下賢吾 (東大・医科研)
「蛋白質の配列・構造・機能相関の博物学」
川端和重 (北大・院・理学)
「細胞システムの協同現象における動力学効果」
美宅成樹 (名大・院・工)
「おわりに:ゲノムからの全タンパク質を俯瞰するための物性解析」
生体内には,エネルギー変換により機能する‘モーター’と分類できるタンパク質やその複合体が多数存在する.本シンポジウムでは,従来の分子モーターと, ‘モーター’の多様な機能を同時に考察する.それぞれの動作メカニズムのより深い理解を図るとともに,‘モーター’の多様性と同一性に迫る.現場で活躍する若手研究者にも成果を発表していただき,斬新な発想に基づく議論の場としたい.
鳥羽栞 (情報通信研究機構・バイオ)
「様々な生体モーターと,分子モーターダイニンの運動の多様性」
富重道雄 (東大・工・物理工学)
「二足歩行する分子モーターキネシンから見えてきたエネルギー変換機構」
上村想太郎 (東大院・薬)
「タンパク質翻訳におけるリボソームの分子モーターとしての役割」
宮田真人 (大市大・院理・生物)
「マイコプラズマの滑走運動 -あたらしい生体運動メカニズム-」
城口克之 (早大・理工学術院)
「ミオシンVの歩く仕組みと,生体‘モーター’の理解へ向けて」
生命活動において重要な役割を果たしているタンパク質とリガンドとの相互作用を分子論的に解明する場合,その相互作用により誘導される構造変化をタンパク質の構造物性としてどれだけ理解できるか,さらにその結果,獲得される特異性の本質をどこまで見出せるか,最終的には,これらの相互作用を原子座標レベルで単純明快に説明できるかということが重要である. 本シンポジウムでは,タンパク質とペプチド,低分子量化合物,金属イオン,金属クラスターなどとの相互作用の構造的,物理化学的な詳細を議論して,個々のタンパク質に特有な研究方法,概念,考え方を共有して,より一般的なタンパク質のリガンド分子認識学への展開を図る.
箱嶋敏雄 (奈良先端大・情報生命)
「ERMタンパク質によるペプチド認識:特異性と複数結合部位の干渉性」
加藤博章 (京大・院薬)
「ルシフェリン-ルシフェラーゼの相互作用とホタル発光色の調節」
齋藤正男 (東北大・多元研)
「ヘムーヘムオキシゲナーゼ相互作用とヘム分解活性」
石森浩一郎 (北大・院理)
「ヘムをリガンドとするセンサー蛋白質の構造と機能」
西野武士 (日医大)
「キサンチン酸化還元酵素の基質・阻害剤結合における様々なアミノ酸残基の役割」
生体系では時空階層間の連携によって生命現象が実現している.シミュレーション研究は,モデルの分解能という階層から出発し,計算機資源の許す範囲で上の階層の生命現象に迫るものである.今後,高速計算機が実現予定であり,マルチスケールシミュレーション研究が盛んになっていくであろう.現在,原子レベルから個体レベルまでの広い階層における生命現象の計算機シミュレーション研究が個々に行われているが,本シンポジウムでは,異なる分解能の研究を横断的に紹介していただく.
木寺詔紀 (横市大・院国際総合)
「ペタスケールの生体分子シミュレーション」
小林千草 (分子研)
「トランスロコンによるタンパク質輸送の分子シミュレーション」
安達泰治 (京大・院工,理研)
「アクチン細胞骨格ダイナミクスのマルチスケールシミュレーション」
大浪修一 (理研・ゲノム科学)
「生体分子複合体レベルからの細胞動態のシミュレーション」
重力はすべての地球上生命体に作用しています.重力はどのようにして受容されるでしょうか? また,重力に対して生命はどのような適応的な変化を起こしているでしょうか?それらの分子的な仕組みはどのようになっているでしょうか?宇宙実験を含めた広い観点から重力について議論できるように,広範囲の研究者のご講演を予定しております.
辰巳仁史,豊田正嗣,古市卓也,曽我部正博 (名古屋大・院医)
「パラボリックフライトによる植物の重力受容の研究」
最上善広,馬場昭次 (お茶の水女子大学・人間文化創成科学研究科)
「ゾウリムシの重力応答」
森田(寺尾)美代,中村守貴,田坂昌生 (奈良先端大・バイオ)
「高等植物における重力屈性の分子遺伝学的研究」
二川健, 中尾玲子, 不老地治美, 平坂勝也
(徳島大学大学院・ヘルスバイオサイエンス研究部生体栄養学)
「筋細胞のUnloadingストレス感知の分子機構」
曽我康一, 若林和幸, 保尊隆享 (大阪市大・院理)
「植物の抗重力反応における刺激受容」
石岡憲昭1,福井啓二2
(1宇宙航空研究開発機構科学研究本部, 2日本宇宙フォーラム)
「宇宙生物科学の新展開」
日本生物物理学会第45回年会実行委員会