生物物理とは
生物物理学は、生命の本質を物理的考え方、物理的方法で研究し理解しようとする学問です。生命は物質で構成されています。その物質から、どのように生命現象が引き起こされるのでしょうか。生命を構成する物質には分子から個体そして生態系まで階層構造が見られます。生命らしさが現れる最も小さい単位は、タンパク質分子やDNAなどの生体高分子です。生体高分子が自己組織化して細胞小器官、さらには細胞が、そして細胞が集まることで器官や個体ができ上がります。様々な個体集団からなる生態系が生命の階層構造の最上位に位置しています、生物物理学の目的は、各階層における生命現象について、物質科学的基礎を理解し、その階層をつなぐ原理原則を見いだし生命現象を解き明かすことです。そのためには、革新的なアイデアや創意工夫を凝らした新しい研究手法や解析法の開発が必要です。研究者がその叡智を最大限に発揮する学問です。
生物物理学は、真理の探究を通して社会の発展に貢献します。これからの高度高齢化社会におけるQOL(Quality of Life)の向上や、医療技術の進歩に、生物物理学の成果は大いに貢献するでしょう。 また、高度情報化社会におけるマン-マシン・インターフェイスの、技術的な諸課題、情報化に伴う心の問題の解決にも生物物理学の成果は役立ちます。 持続可能な地球環境の実現にも、生命の物質科学的基礎の理解とその応用は重要なものとなるでしょう。
あなたも生物物理学とともに未知の世界へ探検に出かけませんか?
2019年6月22日
原田慶恵
一般社団法人日本生物物理学会 2019-2020年度会長
大阪大学 蛋白質研究所 教授