会長挨拶

 日本生物物理学会は1960年12月に誕生し、2014年1月には法人化により一般社団法人日本生物物理学会となりました。日本生物物理学会と同じ年に生まれた私は、大学院生の頃から本学会を最も大切な学会として位置付けて活動してきましたが、このたび2年の任期で、会長として本学会の運営に携わることとなりました。たいへん身の引き締まる思いです。どうぞよろしくお願いいたします。

 多様性の学問である生物学と、現象を1つの数式で表すことを目指す一般性の学問である物理学を合わせた「生物物理学」とはいったいどんな学問でしょうか?

 2010年12月、日本生物物理学会が東京・お台場で50周年記念事業を行った際に、私はパネルディスカッション「生物物理、今後の50年」の司会を担当し、同世代のパネリストとともに今後の50年について議論しました。2012年2月には、学会誌「生物物理」の300号記念特集において、座談会「生物物理の未来」の司会を担当し、分野を代表する先生方と生物物理の未来について議論しました。
 この学問が興ったとき、一見、熱力学の第二法則に反しているように思えた生命現象(それゆえ負のエントロピーを食べると言われた生物)も、現在では見事に物理法則で説明されることが明らかになっています。現在、本学会に所属する研究者の多くは、複雑で精妙な生物の営みがなぜ実現するのか、それぞれの立場で明らかにしたいと考えているに違いありません。
 ただし、これに答えを出すのは容易ではありません。そのためには、生物を構成する原子や電子(10-15 m)から個体(101 m)まで15桁を超える空間スケール、光の吸収(10-15 sec)から進化(1015 sec)までの30桁に及ぶ時間スケールといった様々な階層で起こる個々の現象を正しく理解し、それらを統合させる必要があります。このためには既にある技術や手法を使えばよいというものではなく、新しい技術や手法の開発が求められます。伝統的に、生物物理学会の会員が得意としてきたのはこのような手法開発や技術の開拓です。
 私は50周年のパネルディスカッションで『生物物理への期待』について、「これまでがそうであるように、新しい計測手法や解析手法を戦わせる場であってほしい。」と発言しました。
 歴史と伝統のある日本の生物物理学が、他にはないオリジナルな研究を国際的に発信し続けられるよう、学会として何ができるかを理事や会員の皆さんと考えてゆきたいと思います。

 私は50周年のパネルディスカッションで『生物物理への期待』について、「組織としてはこれまで同様、若手が元気であること。」とも発言しました。
 若手の元気さは日本生物物理学会の伝統であり、大きな特徴(特長)です。学会の規模が大きくなると年会の懇親会に学生さんが参加しなくなる傾向がありますが、会員が3000人を超える規模となった現在でも、多くの学生さんが懇親会に出席し、様々な議論を続けています。私はestablishした研究者と学生さんが混在し、時として料理を奪い合う懇親会の光景が大好きです。若者を取り巻く環境や将来についての悲観論が多く語られる昨今ですが、本学会の財産である若手の元気さがこれからも続くよう、学会として何ができるかを理事や会員の皆さんと考えてゆきたいと思います。

 最後になりますが、本学会が生物物理学という学問の面白みを発信し、若手が将来の希望を持って研究できるよう、理事や会員の皆さまのご協力を得て尽力してゆきたいと思います。ご理解とご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

2017年6月24日
神取秀樹
  一般社団法人日本生物物理学会 会長
  名古屋工業大学 教授