会長挨拶

 日本生物物理学会は1960年12月10日に設立されました。これまでに27名の先輩が会長職を務められ、私は28人目の会長として2019年6月末から2021年6月末まで本学会の運営に携わることになりました。
 先日、会長職を引き継ぐにあたって、資料の整理を行いました。その中に、学会設立時から電子化されるまでの会員の入会カードのコピーがありました。現在、入会手続きは、必要事項を記入した入会申込書のファイルをメールで送るのが一般的ですが、以前は裏が会員登録カードになったはがきを郵送していました。どのような方が会員だったのか興味があり、すべてに目を通しました。その中には、私のカードもあり、入会が1986年8月であったことが改めて分かりました。学会の設立間もないころ入会された方の中には、大沢文夫先生が著書の中で「生物は積木細工ですね」とおっしゃった、というエピソードが紹介されている湯川秀樹先生、統計物理学、物性物理学の分野で国際的に著名な久保亮五先生、ノーベル化学賞を受賞された福井謙一先生をはじめ、物理学、生物学、化学、医学の著名な先生がたくさんいらっしゃいました。当時、生物物理学という新しい学問領域に、いかに大きな期待が寄せられていたかがわかります。
 来年、生物物理学会は60周年を迎えます。この60年で生物学は大きく発展し、重要な機能を有する数多くのタンパク質が発見され、ヒトゲノムをはじめとする、いくつかの種のゲノム情報が解読されました。しかし、残念ながら、それだけでは生命を理解することができないことがわかりました。遺伝子発現の時空間制御をはじめとする、時間や空間の重要性だけでなく、生物物理が昔から取り扱っている、光、力、温度をはじめとする様々な物理的因子の生命機能における重要性が最近注目されています。また、創薬のツールとして構造生物学はますすその重要性が増しています。さらに、実験生物学と理論生物学、計算科学、情報科学などの融合は、今後の生命科学の発展に不可欠であることはだれもが認めるところでしょう。生物物理学への期待と重要性は、学会設立時と同じく、あるいはそれ以上となっています。
 2023年IUPAB (International Union for Pure and Applied Biophysics) Congress が京都で開催されます。国内外に日本の生物物理学をアピールするとともに、今後の生物物理学の発展のために重要であると考え、我々はIUPABを日本に誘致しました。現在、開催に向けて準備が進められています。IUPAB Congress 2023の成功のために、会員の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
 最後になりましたが、これからの2年間、日本生物物理学会が会員の皆様の研究交流の場として、皆様の研究にお役に立てるよう、理事のメンバーと尽力していく所存です。

2019年6月22日
原田慶恵
一般社団法人日本生物物理学会 会長
大阪大学 蛋白質研究所 教授


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